KWINS for PDA(Zaurus)を使ってみたので評価してみた

UPDATE 2004-09-18 23:03 JST
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 2004年6月7日()に京セラの子会社である京セラコミュニケーションシステム(KCCS)がDDIポケットのAirH"網を借り入れて行う‘MVNOサービス’としてZaurus向けに低額の定額PHSデータ通信サービス「KWINS for Zaurus」を開始した.その数日後には,それ以前よりサービスを行っていたSo-netbitWarpPDAZaurus SL-C750/760に対象機器を広げ同じ対象機種で似たようなサービスとなったが,一方のKWINSが6ヶ月や1年といった期間の利用料を先払いする‘プリペイドサービス’であり,一方のbitWarpは一般的な契約サービスで月額支払という大きな差もある.また,微妙にそれぞれのサービスにも差があるので,同じようなサービスであるPocketPC iPAQ向けの低額な定額PHSデータ通信サービスを行っているb-mobileなどと比較しながら紹介したいと思う.

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はじめに〜借りたけど値段とか評価してみる〜

 この「KWINS for Zaurus」は,DDIポケットとアジアパシフィックシステム総研が開発した機器認証システムを利用したサービスである.機器認証によりPDAなどの情報をやり取りする量が少ない機器に利用を限定することで通信(トラフィック)量を制限することが可能となり,それにより低額な料金で定額サービスを提供できるというものとなる.このサービスは,先にSo-netがbitWarpPDAとして同様のシステムを利用してサービスを2003年12月にはじめて開始した.また,認証機器システム自体は独自のものを利用しているが,日本通信のb-mobileもPocketPC iPAQに限定したPDA向けの低額通信費サービスを行っている.そもそもは日本通信が法人向けにはじめたのがこのようなサービスの発端だった.ユーザーとしては,その対象機器でだけ利用するのであれば格安でモバイルワイヤレスネットワークが手に入れられるためかなり好評を博している.ちなみに,bitWarpPDAについてはサービス開始当初に契約をしてレポートを書いたのでそちらを参照して欲しい.

 今回は,KCCSにKWINS for Zaurusをお借りしたのでレポートしようと思う.借りた期間としては,8月中旬頃の2週間ほどだったためやや時間が経ってしまったが,それほど問題はないだろう.ちょうど2004年9月末まではZaurus SL-C860とKWINS for Zaurusがセットになったパッケージ製品も販売されているし,なぜかITmediaではここ最近に記事が出ていたのでSL-Zaurusの関係とかで在庫処分とかしているのかもしれないしよかったのかもしれない(笑).この場合,14日間無料通信可能なライセンス付となっているが,SL-C860だけ欲しい人は面倒でなければ無料期間をすぎてからカードだけ売っぱらってしまってもいいかもしれない(^^;

 サービス比較表を以下に作ってみた.料金に関しては,各種割引やキャンペーンなどの例外が多く,単純に比較できないのがむず痒いのだが,2004年10月末まではbitWarpの初期費用割引キャンペーンによりかなり割安感がある.さらに,bitWarpだとSo-netカードを作れば5%割り引かれたりもする.月額料自体は,KWINS for Zaurusがやや安いようだが,プリペイドであることなどを考えるといつでも解約できるbitWarpPDAのほうが気軽に利用できるだろう.逆に会社などではプリペイドのほうが支払やすい場合もあると思われるので一概にどちらがいいとは言えないかもしれない.自分の用途に合わせるのがベターとなる.b-mobile iPAQ All in Oneパッケージはやや初期パッケージが高くなっているようだ.地図サービス「b-Walker」など付属サービスが多いというのもある.

サービス KWINS for Zaurus bitWarpPDA b-mobile iPAQ All in One AirH"
対応機器 Zaurus SL-C860/760/750 Zaurus SL-C860/760/750 PocketPC iPAQ h2210/h5550 特に制限はない
料金(税込) 支払方法 プリペイド(1年or半年一括支払) 月額契約支払 プリペイド(半年一括支払) 月額契約支払
1年間利用費総額(内訳詳細) 35,175円(カード代14,175円/1年ライセンス21,000円)(*1)(*2) 32,340円(カード代7,140円(*3)/月額料金2,100円×12) 48,500円(PDA100C2-6MBの概算価格35,700円/6ヶ月更新ライセンス12,800円)(*4) 67,892〜72,892円(カード代0〜5,000円程度/AirH"32k月額料金5,176円×12/プロバイダIIJmio月額料金315円/初期手数料2,000円)(*5)
月あたりの費用(2年目〜) 2,931円(1,750円) 2,695円(2,100円) 4,042円(2,133円) 5,658円(4,918円)
PDA(対象機器)以外での接続 不可 別途従量課金(10.5円/分)が用意されている 不可 制限されていないので定額に含む
接続方法 128k/32kパケット通信 128kパケット通信 128k/32kパケット通信 上記料金で定額であるには32kパケット通信のみ
メールサービス × × 契約したISPによる(IIJmioは×)
圧縮サービス ○(プロキシによるものでユーザーが自由に利用/非利用を設定で変更可能) ○(基本的に必須となっているが裏技としてはずすことは初心者にはかなり難しいが可能) ○(プロキシによるものでユーザーが自由に利用/非利用を設定で変更可能) 利用可能(2004年9月〜モニターサービスとして専用アプリが必要ない圧縮サービスも開始されている)
カード端末 AH-H403Cベース AH-N401Cベース AH-H403Cベース AH-S405C/AH-H403C/AH-N401C/AH-F401U/AH-S101Sなど多数
その他 SL-C860とのセット販売もある. So-netの他のブロードバンド系サービスとセットで利用すればさらに安くなる. 位置情報+地図サービス「b-Walker」が付属する.
h2210/h5550とセットで購入するしかない.
定額サービスではないネット25やパケコミネットなどコースが豊富にあり,新しいサービスがでれば乗り換えることも比較的容易である.

(*1) カードとライセンス(1年or半年)を同時購入すると1ヶ月分のライセンスがプレゼントされる.その場合は,月額2,706円となる.
(*2) カード+半年ライセンスだと25,725円となり,これに半年ライセンス11,550円をプラスすると総額37,275円,月額3,106円となる.
(*3) 2004年10月30日までのキャンペーン価格となっている.それ以降は,通常料金の14,490円となる.その場合は,総額39,690円,月額3,308円となる.
(*4) hp PocketPC iPAQ h2221/h5550のどちらかと一緒に購入しなければならないため既存ユーザーは利用できない.
(*5) IIJmioは対応していないが,すでに自宅などにADLS/FTTHなどを利用している場合は,その契約ISPがA&B割に対応していれば月額利用料が4,060円となる.

KWINS for PDAを使ってみた!

 どうやら借りたパッケージは法人向けのKWINS用のものだったらしく,機器認証に対応させた設定だと通信できないで大変だった.KWINS for Zaurus用のパッケージだと思ってサポートなどにも電話していたのでなかなか手間取ってしまったようだ.また,カードのバージョンなどもきちんとVer.1.02以上にしていないと機器認証のものには利用できないようでさらにてこずる(^^; ただ,KCCSの人が言っていた「現状で通常のKWINSをCFカード端末(KW-H128C2)で使っている人はKWINS for Zaurusの更新パッケージを購入すれば利用可能」というのは確証できた気はした(笑)... というわけで,通常のKWINSを利用している人で実はSL-Zaurusでしか使っていない人がいたら要検討ですよ♪箱やら中身はごく一般的というかシンプルなものとなっている.説明書は全21ページとなっており,なかなか丁寧に書いてあるとは思った.マニュアルやドライバ類などはKCCSのウェブサイト上にも置いてあるのにも好感は持てた.

[IMG] KWINS 箱 [IMG] KWINS 中身 [IMG] KWINS 説明書

 カード端末は,AH-H403CベースでWIPSに対応させたものとなっている.そのため,感度やでっぱりなどはAH-H403Cと同じと考えていいと思われるので,AH-H403Cのレポートを参照していただきたい.AH-H403Cベースの端末は,アンテナが取れやすいが,取れにくくしてあるものもあるという噂もあるが,今回貸し出してもらったものに関しては簡単に取れるものだった.取れてなくしてしまった場合は,2,000円程度で購入できるがなかなか馬鹿にならない買い物となる.取れやすいときはペンチなどで軽く締めておくとよいだろう.

[IMG] KW-H128C2C in PCカードジャケット [IMG] KW-H128C2/AH-H403C [IMG] KWINS向けの通信カード(KW-H128C2C)
[IMG] KW-H128C2Cの裏面 [IMG] PHSカード端末を並べてみる [IMG] PHSカード端末を並べてみる(2)

 さて,実際に利用するにはSL-C760とSL-C750のユーザーはSHARPのサイトに行き,機器認証システムに対応させるためのアプリケーション「authdrv」をダウンロード/インストールしなければならない.ここではSL-C750を使ったのでauthdrv_c750-1.1.0_arm.ipkをインストールした.他のアプリケーションと同様に簡単にインストールは行える.ただ,ひとつだけ違うのはインストール後再起動を求められる点だろう.インストールしたら,カード端末を挿して,設定をするが,カードを自動認識してくれるため設定はかなり簡単にできる.なによりマニュアル通りにやればいいだけなのでマニュアルを読みながらやることをお勧めする.電話番号や機器認証にチェックが入っているかなどを一応最後に確認していざ通信してみるとあっさり接続できるだろう.

[IMG] KWINSカードをSL-C750にさした状態 [IMG] SL-C750とKWINSカード(パンダカラーとして似合っているかもしれない) [IMG]
[IMG] authdrvのインストールとその後の再起動要求 [IMG] KWINSカード自動認識とネットワーク設定 [IMG] 機器認証を使用するの設定

 一応速度測定などしてみる.測定はBNR(Broadband Networking Report Speed Test)画像読み込み版を利用した.また,同時にアップロードについてもBNRを利用して測定した.ただし,プロキシによる圧縮サービスは利用していない.結果としては,上り/下りともに80kbps程度を記録しており,128kパケット通信としてはいいほうだろ.同時に同じ場所でパソコンでb-mobileで128kパケット通信してみたが,同じく80kbps前後だった.Zaurusだからといって遅くなることもないし,KWINS for Zaurusも好調だった.ちなみに,AirH"網は5月あたりから一部の地域で上りも下りと同じ128kbps(理論値117.6kbps)に対応している.私の利用している都内での地域ではほぼ対応しているようである.画像圧縮プロキシを通したら当たり前だがすさまじい数値が出る.この数値に意味はないけれども一般的な高速化/圧縮サービスと同等のものだというレベルで特に詳細は調べなかった.ちなみに,機器認証は特にbitWarpPDAのものと差異はなくskdata.macができたりするってことを書けばそれなりの人はわかってもらえると思う.

[IMG] 速度測定 [IMG] プロキシの設定 [IMG] 圧縮プロキシ経由の速度測定

 KCCSの人の話によるとPocketPC向けの同類のサービスは将来的に対応する計画はあるが,現状では対応機種やスケジュールなどの詳細は明確になっていないそうだ.同様に,KWINSで無線LANスポットサービスへの対応がはじまっているが,これにPDA専用コースが対応する可能性はあるとのことなので期待はしたい.対応する場合はなんらかのオプション(有料?)となるようだが(^^; また,法人向けにはPDA専用のサービスを設けてあり,やろうと思えばIP-VPNなども可能なようだ.

まとめ

 コンシューマ市場にソースネクストブランドで乗り込んできたり,PDA(Zaurus)専用コースをSHARPとの提携を中心に提供してきたりとあくまで裏方的な位置に止まっているようにも見えるKCCSだが,だからこそ法人向けサービスと個人向けサービスの差が埋まっていない気もする.これはb-mobileにも言えることだが,個人向けである以上はメールやウェブスペースなども用意する方向性が欲しい.ただ,逆に法人に近いというところで中小企業などで個人契約でデータ通信を利用しようというケースには利用しやすい場合もあるようだ.私としてもプリペイドであることはちょっと嬉しいわけだが(笑)...

 単純に一番の特徴でもある料金面を見ればキャンペーン割引などもありbitWarpPDAのほうが割安感もあるし,月額支払という面も個人ユーザーには利用しやすいように思う.ただ,bitWarpPDAは人気があるのかかなりトラフィックが増えているため時間帯によってはかなり速度が出ないときがあったり,基本的にはウェブ閲覧に関しては圧縮サービスを介さなければならないということもあり表示がもたつくなどのことがある.それに対して,KWINSは比較的回線の容量に対して余裕があるのか快適に通信できた.快適に通信できてもたかが128kパケット通信なわけで,この辺りと料金,そしてメールがあるかなど細かい部分での総合評価をして選択すべきだろう.2004年6月時点では,KWINSは3万ユーザー程度であるという話を聞いた.bitWarpはわからないが,b-mobileは2004年3月時点で1万程度だったはずなのでMVNOとしては実はかなりユーザー数が多いと思われる.それでも回線に余裕があるわけだからそれなりにDDIポケットから割り当てられているのだろう.まぁ,どうせbitWarpだってAirH"定額サービス開始時のようにそのうち混雑状態も緩和されるんだろうけどね(^^;

 新しいサービスは,恐らくDDIポケットに限れば256kパケット通信というものが控えているが,これは当初PCカード端末のみとなるだろうし,CFカード端末がでるのは128kパケット通信のときを振り返れば少なくともサービス開始後半年はかかると思われる.そうなると今だったらまだ1年ライセンスを購入してしまってもいいような気がする.個人的には,これからSL-Zaurusのみで通信をするというような人であればかなりKWINS for Zaurusは魅力的な商品だと思った.ただ,私に関して言えば,すでにbitWarpPDAはカード端末を持っているためどちらにするかというのは非常に悩ましいところである.KWINSのカードを持っていればKWINS for Zaurusに行っていたのになぁ,惜しい...